野良を拾う

ふとしたところにダンボールがおいてあった。
何の変哲もない只のダンボールである。
ミカン箱くらいの大きさなのだが、特にみかんのイラストなどは描いてない。
全くもって無地である。
みっちりと蓋がしてあるわけではなく、かといって蓋があいているわけでもない。
なんとなく開きかけの貝の様な印象を受けた。
近づいてみる。
ふーっ
猫の威嚇音みたいなものが聞こえてきた。
とするとあの中に入ってるのは猫か。
猫ならば拾って飼おうと思い、更に近づく。
ふーっ
威嚇音に少し脅えた調子が混ざる。
無言で近づいたのがいけなかったのかも知れない。
大丈夫だよーにゃー
そう言いながら近づいてみたが効果はなかった。
にゃーっと鳴いたのが偽者くさかったので余計警戒されたのかもしれない。
まぁ仕方ない。
気にせず猫を拾い、その後ぬるいものを与え湯攻めにし熱風をかけ乾燥させて毛布でくるみ寝付くまで見張ってやるのだ。
そう思いダンボールに手をかけた。
ふーっ
ますます高くなる威嚇音。
いまだしてやるからな。
ダンボールの隙間に手を差し込む。
「いたっ」
慌てて手を引く。
噛み傷がついていた。
いや、それはどうでも良い。
いや、どうでも良くないんだがまぁどうでも良い。
問題は今噛み付いたのは「ダンボール」だったということだ。
見間違いかもしれない。
しかし、どう考えてもダンボールだった。
でももう一回試して噛まれるのはいやだし…。
あっ、そうだ。
ふと思いつき、鞄の中からルーズリーフを取り出した。
そっとダンボールの隙間に差し込む。
するとダンボールはがたがた動きながらそれを食べ始めた。
そしてすっかり食べ終わると、ふぅーんと鳴きながら僕の足元にすりよってきた。
おいしかったのか…。
「もう一枚食べる?」
そう聞くと僕の言葉が分かるのかさっきよりはげしくすりすりしてきた。
よしよしと思いながらルーズリーフをさしだすとやっぱりがたがた動きながら食べた。
なんでだろう。
胸がときめく。
これは恋!?
そんなわけはないがしかし愛着がわきつつあるのも事実だ。
「なぁダンボール、僕んちこないか?」
気がつくと僕はそう言っていた。
ダンボールはふぅーんと鳴きながらすりすりしてきた。
多分了承だろう。
そう判断した僕はひょいっとダンボールを小脇にかかえた。
さぁ家に帰ろう。
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